さかしき人にみるこころ
サークル名
作品内容
◆物語
「ちょっとそこの本、こっちに上げてもらえませんか?」
「え?」
おれの名前は勾坂一重。
自分で言うのもなんだが、成績は優秀、誰からも好かれる好人物だ。
今日は借りていた本を図書室に返しにきたんだけど……
「ちょっとそこの本、こっちに上げてもらえませんか?」
上のほうから声がする。振り返ってみると彼女は脚立の上にいた。
そしてこっちを向かずに声を掛けてくる。
こういうときは愛想よくするのがおれのスタイル――
だから、にっこり笑ってみせる。
「うん。いいですよ。ここのカートの?」
「ええ。そうです。すいません」
ちょっと見た顔だ。確か同級生。確か同じ3年生。
一緒のクラスじゃないんで名前は知らない。
おれには見向きもせずに本を整理している。
「どれ?ぜんぶ?」
「ええ、ぜんぶ。ごめんなさい、使い立てしちゃ……って」
こちらを振り向くなり、彼女はフリーズした。
「な、何だろう?これじゃなかった?」
「……いいえ。ごめんなさい」
「わたし、あなたが嫌いなの。『勾坂一重』くん」
「嫌いって……どうして?理由は?」
「特にありません、理由なんて。強いて言えば『あなたの名前が嫌いなんです』」
冷たい声でそう言い残して、彼女は歩み去っていった。
……おれ、彼女に何かした?
◆登場人物
●真柄亜利美(まがら ありみ)
本作のヒロイン。3年生。越前市(旧・武生市)出身。
「クールビューティー」のひと言がよく似合う知性派少女。
無愛想でキツい性格に思われがちだが、実際のところとてもシャイで負けず嫌い。
特に主人公・一重に対しては『先祖の恨み(?)』が重なってとても攻撃的。
実家は医者一家で自身も医大めざして受験勉強中ですが、その進路と適正のギャップに悩んでいます。
一重をにべもなく突き放す本当の理由は、○○オタク!?
●純紀子(すみ のりこ)
3年生。亜利美の同級生。
亜利美とは気のあったお友達。男子にも女子にも「どんちゃん」というあだ名で呼ばれている。
いつもほんわりと笑っている女の子でプロポーションは良さげに見えます。
現実とフィクションを曖昧にした思考をするクセがあり、きまって亜利美にたしなめられる。
●純真路乃(すみ まじの)
一年生で、紀子の妹。
たいがいのことはチャキチャキとこなすスーパー妹。
トロい姉の保護者を自ら任じているが、実は精神的に、大きく姉に依存しています。
姉とは逆に、異様にしっかりした+かなり暴力的な=「スパルタンな」性格です。
ジャンル
価格
2940円